毎年のように発生する台風や集中豪雨により、住宅への被害が全国で報告されています。こうした背景から、家づくりにおいては災害対策への関心が高まっています。
しかし、どのような構造や設備が必要なのかを、建築前に正確に判断するのは容易ではありません。図面や資料だけでは把握しにくい部分も多いため、住宅展示場を見学して実物を確認することが重要です。
そこでこの記事では、展示場で確認すべき災害対策の具体的な内容と、見学時のポイントを解説します。これから家を建てる方や、防災性能に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
なぜ今「災害対策」が家づくりで重要視されているのか?
近年、日本では台風や集中豪雨などによる大規模災害が頻発しています。国土交通省のデータによると、令和元年の台風第19号では90名が亡くなり、住宅の浸水被害は約70,000棟にのぼりました。
こうした災害は一部の地域に限らず、全国各地で発生しており、今やどこに住んでいても備えが必要な時代です。同じ地域内でも、屋根の構造や浸水対策の有無によって被害状況に差が出ることがあります。
住宅の構造や設備によって災害リスクを最小限に抑える工夫は、家族の命と財産を守るうえで欠かせません。
日本で備えるべき自然災害とは
日本で住宅を建てる際は、以下のような自然災害への備えが不可欠です。
- 台風:強風による屋根の飛散や窓ガラスの破損
- 地震:建物の倒壊や基礎の破損
- 浸水・洪水:床上・床下浸水、電気設備や給排水設備の故障
これらの災害は地域や季節を問わず発生する可能性があり、誰にとっても無関係ではありません。そのため、住宅の設計段階から各災害リスクを想定し、複数の災害に対応できる構造や設備を取り入れることが防災の基本といえます。
住宅展示場では災害対策を実物で比較・体感できる
住宅展示場では、災害対策が施された住まいを実際に確認でき、ネットや紙の情報だけでは分かりにくい構造や設備の違いを体感できます。特に以下の点は、視覚的に把握しやすく、ハウスメーカーごとの方針や工法の違いを比較するうえで役立ちます。
- 屋根の形状
- 構造材の厚み
- 防災設備の配置
たとえば、耐風シャッターや強化ガラスを標準装備する住宅など、ハウスメーカーによって対策の内容に差があります。
台風に備える!災害に強い住宅を見極める5つのポイント
台風に強い家を建てるには、構造や設備に関する具体的な対策が重要です。ここでは、住宅展示場の見学時に確認しておきたい5つのチェックポイントを解説します。
台風に強い屋根・外壁の構造をチェックする
屋根と外壁の構造は、台風による被害を左右する重要な要素です。特に屋根は風を受けやすく、形状や素材によって耐風性に差が出ます。
片流れ屋根(屋根が一方向にのみ傾斜している形状の屋根)や軽量金属屋根(従来の瓦屋根などに比べて軽量な金属製の屋根材のこと)は風の逃げ場が確保しやすく、被害が抑えられるとされています。
外壁についても、耐風圧性の高いサイディング材や強化された下地を使うことで安全性が高まります。住宅展示場では、屋根や外壁の固定方法や金具の仕様についても、ハウスメーカーごとの違いを具体的に確認しておくと安心です。
飛来物に備えた窓・シャッターの性能を確認する
台風時には強風に加え、飛来物による窓の破損も大きなリスクとなります。安全性を高めるには、ガラスの強度とシャッターの有無が重要です。
複層ガラス(2枚以上のガラス板を重ね、その間に中空層と呼ばれる空間を設けたガラスのこと)や防犯合わせガラス(2枚以上のガラスの間に特殊な中間膜を挟み込んだガラスで防犯性能を高めたもの)は割れにくく、アルミや樹脂製のシャッターは飛来物の衝突を軽減します。
住宅展示場では、窓の厚みやシャッターの操作性を実際に確認できます。あわせて、窓枠の素材や構造にも注目するとよいでしょう。
浸水を防ぐ敷地条件や排水設計に注目する
住宅の耐水性は、建物だけでなく敷地の形状や排水計画にも大きく左右されます。特に浸水リスクのある地域では、土地の高さや水の逃げ道の有無が重要です。
たとえば、周囲より高く造成された「かさ上げ地盤」や、排水ポンプ・側溝の設計があるかどうかが判断のポイントです。住宅展示場では、こうした敷地利用や水害への具体的な対応策について、担当者に確認しておくと安心です。
停電・断水に備える住宅設備を確認する
台風による停電や断水が発生すると、日常生活に大きな支障をきたします。そのため、非常時を想定した住宅設備の有無は、住宅選びにおいて重要なポイントです。
次のような設備があれば、インフラが停止しても最低限の生活を維持できます。
- 太陽光発電
- 蓄電池
- 非常用貯水タンク
住宅展示場の中には、停電時の照明や水の使用方法を実際に体験できるものもあります。設備の有無だけでなく、日常での扱いやすさも確認しておくことが大切です。
非常時を見据えた収納計画や生活動線をチェックする
災害時には迅速かつ冷静な行動が求められるため、備蓄品や避難用品の収納場所を事前に決めておくことが重要です。災害に強い住まいでは、非常時を想定した収納や動線の工夫が取り入れられています。
たとえば、以下のような工夫があります。
- 玄関近くに非常持出袋を置くスペースを設ける
- 停電時でも安全に移動できるよう広めの廊下を確保する
- トイレや洗面所など、在宅避難時に使う場所へのアクセスを確保する
住宅展示場では、図面だけでなく実際の動線の広さや収納の位置・容量を体感しながら確認しておくことが大切です。
まとめ|展示場で学ぶ災害対策が安心の住まいをつくる
住宅展示場では、ネットや紙の情報だけでは見えにくい災害対策の工夫を実物で確認できます。屋根や窓の構造、敷地の排水設計、停電・断水への備えなど、各ハウスメーカーの取り組みを比較することで、防災性能の違いを具体的に理解できるでしょう。
また、非常時を想定した収納や動線の工夫に触れることで、住まいの安全性を多角的に見直すきっかけにもなります。安心して暮らせる住まいを実現するために、展示場での体験を計画づくりに活かしましょう。